稲垣貴彦(以下稲垣):2023年4月、三郎丸蒸留所はオリジナルのウイスキーグラス「The Ultimate Peat Glass」をリリースしました。私たちとともにその開発に取り組んでいただいたのが、木本硝子株式会社の木本社長です。
木本誠一氏(以下木本):今回チームの一角に加えていただき、一緒に誇らしい仕事ができたことを感謝しています。私たち木本硝子は、100年近い歴史を重ねてきたガラス食器のプロデューサーです。東京を中心に日本全国、また世界各地のネットワークを活用して、ガラス製品の新しい世界観をプロデュースすることを目指して事業を行っています。
稲垣:三郎丸蒸留所オリジナルグラスの開発を始めるにあたって、以前お会いしたことがあった木本社長に相談を持ちかけたのが今回のきっかけでした。
木本:ええ。大手メーカーならいざ知らず、クラフト蒸留所さんが独自のグラスをつくると聞いて、ワクワクしたのを覚えています。
稲垣:ウイスキー蒸溜所がどんどん増えていく中で、自分のウイスキーをいかに楽しんでもらうか、飲み方まで提案できないかと考えていました。三郎丸蒸留所はスモーキーなウイスキーをつくっているので、ピートに特化したウイスキーをより楽しめるグラスをつくりたいと思っていたんです。
木本:プロモーション用にロゴが入っているだけのオリジナルグラスというものは多々あります。しかし稲垣さんが考えていたのは、三郎丸蒸留所のウイスキーのコンセプトや魅力をさらにお客様へ届けるために、形から新たにつくる本当のオリジナルグラス。私の知るかぎり、少なくとも日本では初めての取り組みではないかと思います。
稲垣:はい。ベルギービールには醸造所ごとにオリジナルのグラスがあって、それがまたベルギービールの魅力になっていますよね。日本でもウイスキー蒸留所がそれぞれのコンセプトを体現するグラスを持つようになったらおもしろいな、という思いもありました。
木本:稲垣さんのそんな思いをうかがって、ぜひ一緒にやらせていただきたいとお受けすることにしたんです。
稲垣:とはいえ私も、今回のプロジェクトを通じてグラスの奥深さは自分の想像以上だと実感しました。
木本:稲垣さんたちが当社にいらっしゃった時のことはとても印象に残っていますよ。三郎丸蒸留所のウイスキーと、グラスをたくさん持って来社されて、ガラス屋にあんなにたくさんのグラスを持ち込んでくる人を初めて見ました(笑)。
稲垣:そうでしたね(笑)。自分たちで持ってきたものと木本硝子さんがお持ちのものと、それこそ何十種類ものグラスで香りや味の感じ方を確かめていきました。ほんの少しグラスの形状が違うだけでも香味が大きく変わるんですよね。とても貴重でおもしろい経験でした。
木本:テーブルいっぱいに並んだグラスそれぞれに対して、皆さんのコメントうかがいながら、「それならこう」「だったらこれ」と少しずつ絞り込んでいきましたね。
稲垣:はい。グラスの方向性としては、ウイスキーの香りをそのまま感じさせるもの、良い部分もネガティブな部分も増幅するもの、ネガティブを抑えて良いところを引き出すもの、といろいろな方向性があって、その中でも私たちは「ピートを極める」という蒸留所のコンセプトに従って、良いフレーバーを引き出し、それをストレートに伝えられるような形状を木本さんと話し合いながら追求しました。
木本:実は、皆さんが表現する言葉を聞きながら、それをグラスというモノに具現化していくところが、非常に楽しくもあり、また苦心したところでもありました。
稲垣:ボディの形状や鼻と液面の距離といったフレーバーに関することはもちろん、足の長さや台座の大きさなど機能性について、また手に取った時の質感や満足感、飾った時の美しさに至るまで、いろいろな要望を聞いていただきました。
木本:ウイスキーを楽しむシーンだとかその時のお客様の所作だとか、そういうところまでしっかりイメージされているんだなと感じました。その上で、こちらで試行錯誤してつくり上げたものを稲垣さんにお送りしまして。
稲垣:はい。届いた試作品は私のイメージを超えるもので、すごく嬉しかったです。
木本:送ってすぐに連絡が返ってきて、「すごく良い」って言っていただいて、私も非常に嬉しかったですね。
稲垣:この「The Ultimate Peat Glass」は、ひとつひとつハンドメイドです。東京のガラス職人さんの数は、もうかなり減ってしまっていると聞きました。
木本:そうですね。ガラス製品はオートメーションで製造されるのが世界的な潮流で、手づくりできる技術を持つ職人のいるガラス工場は東京だと3軒しかありません。今回のグラスで言えば、依頼できる職人は1人だけです。
稲垣:ハンドクラフトでできる職人さんが減ってしまって、でもその技術は後世に伝えていかなければいけない。だから今回は日本の職人さんに手掛けてほしいと初めから考えていました。
木本:手づくりの職人は、当然ながら量はつくれない。だからこそ、本当に職人の技術が生み出す質を求めて喜んでくれるお客様に届けることで存続を目指さないといけません。その点においても、今回のプロジェクトは価値のあるものだと考えています。
稲垣:富山にもガラス工芸があり、「The Ultimate Peat Glass」は東京でつくったグラスに、富山でサンドブラスト加工を施しています。東京と富山のガラス技術の融合と言えます。
木本:はい。まさにチームとして、ひとつのグラスをより価値あるものにつくり上げることができたと思っています。三郎丸蒸留所のウイスキーを楽しむお客様に喜んでもらえたなら、それが私にとっても最高の喜びです。
稲垣:ぜひ皆さんにこのグラスを手にとっていただいて、ウイスキーとグラスがマリアージュする体験をしていただきたいですね。木本さん、本日はありがとうございました。
−形から新たにつくる真のオリジナルグラス−
既存のグラスにロゴを入れるだけのオリジナルグラスとは違い、何十種類ものグラスで香りや味の感じ方を確かめ、たどり着いた形です。ほんの少しグラスの形状が違うだけでも香味が大きく変わるため、「ピートを極める」三郎丸蒸留所ウイスキーのフレーバーをストレートに伝えられるような形を追求しました。
−The Ultimate Peat Glassを作る職人はただ1人−
日本の素晴らしい技術を後世に伝えていかなければいけないという思いから、職人のハンドメイドにこだわってつくられています。東京のガラス職人の手でつくられたグラスに、富山県内でサンドブラスト加工を施しました。
−細部に至るまでのこだわり−
グラスの形状・鼻と液面の距離といったフレーバーに関することはもちろん、足の長さや台座の大きさなどの機能性、また手に取った時の質感や満足感・飾った時の美しさなど細部に至るまで試行錯誤を重ねています。
ぜひ、特別なグラスで飲む一杯をお楽しみください。
グラスサイズ : 直径(飲み口)48mm×高さ155mm
紙管サイズ:直径76mm×高さ170mm
価格 : 15,000円(税込16,500円)
すでに完売しております。
− 三郎丸蒸留所が追求する、The Ultimate Peatを体感できる特別なセット −
「ピートを極める」三郎丸蒸留所のウイスキーのフレーバーをご自宅で体感いただけるセットをご用意しました。
The Ultimate Peat Glass、特装版限定ウイスキー、The Ultimate Peatのエンブレムを同梱したセットを数量限定で発売いたします。本セットに含まれるウイスキーは、今回の特装版向けに限定で選定した樽をシングルカスク・カスクストレングスで瓶詰した一本となります。特装版には限定の専用BOXを付属し、グラス、ウイスキー、エンブレムを持ち運びいただけます。
内容物:The Ultimate Peat Glass 1脚、特装版限定シングルカスク三郎丸 1本(700ml)、The Ultimate Peatエンブレム 1個、専用BOX 1箱
グラスサイズ: 直径(飲み口)48mm×高さ155mm
価格:50,000円(税込55,000円)
すでに完売しております。